岐阜調狂俳と俳句の研究

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狂俳の手引き「小中学生用副読本」

2022.05.03 3,558

1. はじめに

金華山の麓(ふもと)にある岐阜公園は、現在織田信長公ゆかりの歴史公園として着々と整備が進められています。
この公園の一画に大きくて立派な石碑が建立(こんりゅう)されています。石碑には「狂俳発祥の地」と刻まれています。
平成28年の夏の頃、井の口まちづくり会において狂俳の再認識と普及発展を図るべく、公園周辺の住民に呼びかけ、翌29年2月有志二十余名でもって「狂俳 岐阜中社」が発足しました。
特に、岐阜中社では岐阜市で生まれた「狂俳」という優れた文芸を再認識し、広く普及するためには、まず小中学生の時代から学び、慣れ親しんでもらうことが大切であるとの見解から、この冊子を作成した次第です。
この小冊子が、小中学生の皆さんはもとより大人の初心者も、岐阜市の貴重な文化財ともいえる狂俳に取り組んでいただける一助となれば幸いです。

2. 狂俳とは

狂俳って何?
多くの人がまずこう言って問いかけられます。
俳句ならだれでも知っているでしょう。しかし、狂俳とはあまり聞きなれない言葉です。
俳句は季語があり、五七五の17文字でその季語を生かした句を作ります。
しかしながら、狂俳は季語にとらわれずユーモアを交えて五七又は七五のわずか12文字で表現する句を作ります。まさに12文字という世界で最も短い詩と言っても良いでしょう。
この詩、言い換(か)えれば文芸誕生の地が他ならぬ岐阜市であり、岐阜公園の池のほとりには、発祥地の顕彰碑があります。
今からおよそ250年前、伊勢の俳人で三浦樗良(ちょら)という人が、俳句の頭五文字を題として、残り十二文字でその題を表現する遊びを考えたのが始まりであり、その面白さから狂俳と呼ばれるようになり、今日にいたっています。

3. 岐阜公園の石碑

4. 狂俳句作りのルール

俳句はまず季語があり、五七五の17文字で纏(まと)めることが原則となっています。
同じように、狂俳にも守るべき原則があります。

第1は、題の文字は句の中へ一字でも詠(よ)み込まないこと。
例えば、題が「花見」で、「花びらが、・・・」題かじりとなる。

第2は、題に対して十二文字で句を作ること。
七・五か五・七の十二文字で収める。

第3は、止め字は仮名の動詞で止めること。漢字止めは避ける。
例えば、動く、ゆれる、帰る、残る、夢を見る、勝つ、着てみたい、・・・

この三原則をまず覚えておくことが大切です。
次に句を作るときの心得をお話ししましょう。

まず第1は、説明句は避けるようにします。
例えば、

「冬」の題に対して、
「寝床のアンカ 暖かい」でなく、「一人寝の床 アンカ抱く」

「バタバタ」の題に対して、
「寝坊して 家を飛び出す」でなく、「朝の寝坊が 騒がしい」

のように単に説明でなく、行動を詠むようにします。

併せて第2に、着想(ちゃくそう:心に浮かんだ工夫や思い付き)を大事にするよう心がけましょう。

5. 狂俳に挑戦してみよう

それでは、狂俳を作ってみましょう。
まず、「課題」を与えられます。
例えば、「学校」という課題とします。
学校というと、次のようなことが連想されます。
入学、卒業、友達、給食、先生、勉強、運動会、校門、遠足、修学旅行等々
学校と関係した上のような内容を織り込んだ句を五七又は七五で作ります。

[ 学校 ]
涙こらえて 門を去る
給食前に グーと鳴る
今日も遅刻で 立たされる
授業終わって 塾へ飛ぶ

狂俳の「狂」は、ユーモアの意味があります。句を表現するときにユーモアも入れると楽しくいい作品になります。
このように色々作ってみて、手直しをしながら、一番よくできたと思われる句を一点学習会などへ提出するのです。
なお、提出にあたっては、A4判の和紙に筆書きし、絵付けをを来ないますと一段と引き立ちます。

6. 狂俳の事例紹介

終わりに小中学生が作ったいくつかの句を紹介しましょう。

小学生の部

[ 鵜飼 ]
火の粉飛び散り 川に消ゆ

[ 花火大会 ]
明るい花が 空で散る

中学生の部

[ 希望 ]
明日があるさ 夢がある

[ 久しぶり ]
昔の友と 語り合う

[ 新年 ]
にこにこ笑顔で 雑煮食う

[ にこにこ ]
家族団らん 花が咲く

[ 白い ]
富士の稜線 化粧する

[ 達者 ]
手を振る君を 忘れない

[ やれやれ ]
ゲームに疲れ あくび出る

7. 狂俳顕彰(けんしょう)行灯まつり

狂俳を一人でも多くの市民、県民の皆様に理解いただくために、岐阜中社では隔月ごとに学習会を開催していますが、更に年に2回の行灯祭りも開催をしています。
特に行灯まつりでは、小学生や中学生の皆さんが作った句を和紙に筆書きし、絵を添えて行燈の木枠に貼り付けます。
できあがった行灯に灯をともし、夏は岐阜公園で、冬はメディアコスモスでそれぞれ展示をして来場者にご覧いただくことになっています。
もちろん、行灯まつりには県内各地より同好者の作品も数多く出品されます。暗闇(くらやみ)の中でほんのりと灯る狂俳はまさしく幽玄(ゆうげん)の世界に見る人を引き込むものと言えましょう。

8. 狂俳を勉強するには

岐阜中社では、狂俳の学習会を金華公民館(岐阜市大工町)で行っています。
隔(かく)月、同公社が集まって井藤惠月先生の指導を受けながら、それぞれが提出した作品について、一句ごとに批評していただいています。
同行者はあらかじめ与えられた課題に対して句を作り、事務局へ提出し、事務局はまとめて井藤先生に届けます。
学習会は原則第3日曜日の午後1時から4時までの3時間です。
もちろん、学習会では、狂俳を作るにあたっての留意点などを先生の指導を受けながら、お互いに和気あいあいの中で進められ、3時間の半ばにはティタイムもセットしてあります。
皆さん、気軽にお出かけください。

9. 県内における狂俳への取り組み

岐阜市で起こった狂俳は、やがて県内各地に瞬(またた)く間に広がっていきました。
戦前や戦後の一時期までは、3000人を超えましたが、最近は同行者も減り、今日では、1000人を切ってしまいました。
特に、発祥の地である岐阜市の中央部が空洞化した状態がしばらく続きました。
しかしながら、岐阜市内の一部や各務原市、郡上市、下呂市や西濃、中濃、東農、飛騨地区においては、生活に根付いた文芸として脈々として活動が継続されて今日にいたっています。
こうした中、岐阜中央中学校での、生徒と住民が一緒に狂俳を学ぶ会をきっかけに県内各地の先輩 狂俳社中に刺激されて、平成29年2月に岐阜市の金華、京町地区を中心に「狂俳岐阜中社」が発足しました。
なお、県内各社中では東海各地の同好会が一体となる東海樗(ちょ)流会を結成し、狂俳の普及発展と相互の研鑽に努めています。

おわりに

狂俳 岐阜中社の学習会などいろいろ指導やお世話になっている方々を紹介させていただきます。

宗家・東海樗流会前会長 加藤 泉水先生
東海樗流会会長 宇野 佐巻先生
学習会講師 井藤 惠月先生
藍水社会長 亀山 麗花先生
華陽社会長 大野 桃香先生

編集発行 平成30年4月20日

狂俳 岐阜中社
会長 堀 達仙
事務局長 安藤 楽泉
連絡先 岐阜市松下町8
電話番号 058・262・0654


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